Ryuji Takezaki(竹崎 竜二)
1999年から野村アセットマネジメントにて、グローバルな資産配分や銘柄選択の投資手法、新商品の開発等に従事。投資開発部長、運用企画室長、年金営業・運用担当執行役員を経て、2016年ウエルス・スクエアを立ち上げる。現在、取締役CIO兼運用部長として、ファンドラップ運用等に従事。共訳として、「資産運用の本質」(きんざい、2016年)がある。
# 超上級編
アセットアロケーション(資産配分)は、資産運用を行う上で重要と言われる。これは、Brinson等が1986年に発表した米国の企業年金のパフォーマンス分析がもとになっている。分析では、リターン変動の93.6%がポリシーと呼ばれる資産配分(以下、戦略的資産配分)で説明されることが分かった。ところがリターン変動についての分析であったため、その後、様々な議論がおきた。それはアクティブ・リスクの大きさで資産配分の寄与が変わるためである。
本稿では、その議論に深入りせず、インデックス運用の活用を前提として、資産分散、戦略的資産配分、リバランスについて解説していこう。
インデックス運用の場合は、戦略的資産配分の違いがリターン変動に直接影響するため、前工程の資産分散がとても重要となる。
1990年頃と比較して、現在の投信では、内外の先進国株式、債券に加えて、新興国株式・債券、ハイイールド債券、REIT、ファクター投資、ヘッジファンドにも投資可能になっている。どの資産を組み合わせるかで、有効フロンティア(リスクが同じなら、リターンが最大となる資産の組み合わせの集合)は異なり、戦略的資産配分の効果も変わってくる。一般的には相関の低い資産であれば、資産数を増やすことで効果の向上が期待される。
この中で留意したいのは為替ヘッジである。というのも、日本は歴史的に円高傾向であったためである。それを反映して、投信では為替ヘッジ有り・無しコースを投資家側で選択できるようになって久しい。つまり、為替ヘッジ有り・無しを別資産と見立てることが出来るようになっている。特に債券の場合、株式以上に為替の影響を受けるため、この組み合わせが大切である。2008年秋に起きたリーマン・ショック以降の世界的金融緩和によりヘッジコストは低下し、有効に活用する機会は増えている。
次に、戦略的資産配分であるが、長期的な視点に立って期待リターンを今後の経済や過去のリターンを参考に決めることが多い。
また、株やREIT比率を多くするか、債券比率を多くするかで、リスクの水準は異なってくる。高リスク志向であれば、株やREIT比率をより多く、そしてそれらをどのように組み合わせるかがポイントである。一方、低リスク志向であれば、債券比率を高くするが、海外債券には為替リスクがある。また、利回りは歴史的に低水準であり、それを踏まえた上で、多様な債券の活用と為替ヘッジの程度がポイントとなる。
最後に、リバランスを取りあげよう。上で決めた戦略的資産配分を維持するため、時価変動によって構成比が乖離すれば、元に戻すのがリバランスである。基本的には、値下がりして配分が減ったものを買い、増えたものを売る。リバランスには、一定期間ごとに乖離した部分を元の配分に戻すことや乖離の許容範囲を定めて超えた際に元に戻すこと等がある。これらは、乖離に関する許容度をどのように定めるかという問題と言えよう。
自分でポートフォリオを組み立てる場合は、リバランス頻度と課税の関係を考えた上でルールを決めればよい。一方、投信のバランス型商品、特にインデックス運用を活用した固定配分のものでは、リバランスルールを明示しているものが多い。また、アクティブ型では、裁量性をもたせている。
ちなみにFunds-iシリーズの「海外5資産バランス」、「内外7資産バランス・為替ヘッジ型」は、配分が固定であり、リバランス機能を有している。また、「インデックス・ブレンド」の場合、投資家のリスク許容度に応じて、5つのタイプの資産配分が用意されている。Funds-iシリーズの様々な資産クラス(為替ヘッジ有り・無しを含む)のファンドを組み込んで分散効果を高める工夫をしている。
以上、資産分散、戦略的資産配分、リバランスを駆け足で見てきた。運用技術の発展は日進月歩であり、ポートフォリオのイノベーションをめぐって、各社しのぎを削っている。